富士キメラ総研は、中国におけるプラスチックフィルム・シート市場の調査を行った結果を報告書「2013年 中国プラスチックフィルム・シート市場の展望」として公表した。同報告書では、原反フィルム・シート17品目、機能フィルム11品目について、現状を分析し今後を予測している。
2012年の中国におけるプラスチックフィルム・シート市場は、前年比6.1%増の728万トン、2015年の市場は、2012年比18.3%増の861万トンが予測される。原反フィルム・シートは、2012年は前年比6.1%増の623万トン、2015年は2012年比17.5%増の732万トンと予測。農業用PEフィルムが全体の36%を占めている。機能フィルムは、2012年は前年比5.1%増の104万トン、2015年は2012年比25.0%増の130万トンと予測。工業製品、物流、農業に使われるストレッチフィルムが38%を占めている。
中国のプラスチックフィルム・シート市場(中国国内需要)
2012年 | 2015年予測 | 2012年比 | |
---|---|---|---|
原反フィルム・シート | 623万トン | 732万トン | 117.5% |
機能フィルム | 104万トン | 130万トン | 125.0% |
合計 | 728万トン | 861万トン | 118.3% |
※数字は四捨五入して万トン単位にしているため必ずしも合計と一致しない。
日本からは、中国に対して10万トン以上のプラスチックフィルム・シートの輸出を行っており、特にPETフィルムなどの輸出量が多い。また、PETフィルム、容器用シート、ONYフィルム、電子材料用フィルムは現地生産化も進められている。
■原反フィルム・シートにおける注目市場
農業用PEフィルムに次いでは、包装材料用途、工業材料用途で一定の需要があるPET系フィルム、食品・洗浄用品・薬品などの包装で使われるL-LDPEフィルム(シーラント用)、導光板や拡散板などの光学用途で需要が多いPMMAシートの構成比が高い。
PCシートは、75%を占める建築・建材用途が一時期よりも成長が鈍化しているものの、LED照明の拡散板の用途で高成長が期待できる。また、広告看板用途でも一定の需要があるとみられ、2015年の市場は55万トンが予測される。
EVAフィルムは、中国では、雨具、テーブルクロス、シャワーキャップなどの生活用品、衛生用品、包装用途や、野菜や花き栽培のハウス用フィルムでの農業用途が多い。今後は農業用途の安定した需要に加え、生活用品や衛生用品などでの需要拡大がけん引し、2015年は14万トンが予測される。
PETフィルムは、包装用途として印刷複合包装やアルミ蒸着真空パック、絶縁フィルムやテープなどの電気・電子部材用途、太陽電池用途など幅広く採用されている。今後は、LCDの拡散フィルムや反射シートなどの光学用途も期待され、2015年には130万トンが予測される。
原反フィルム・シートにおける注目市場(中国国内需要)
2012年 | 2015年予測 | 2012年比 | |
---|---|---|---|
PCフィルム | 40万トン | 55万トン | 137.5% |
EVAフィルム | 11万トン | 14万トン | 127.3% |
PETフィルム | 100万トン | 130万トン | 130.0% |
■機能フィルムにおける注目市場
ストレッチフィルムは、特に物流用途がけん引し、年率10%以上の拡大が続いている。製品や部品の出荷段階における物流梱包資材として、経済発展に伴う物流の増加によって今後も市場拡大が期待され、2015年の市場は55万トンと予測。また、輸出に関しても、大手メーカーの大半が欧州、東南アジア、中東、南米、日本向けに展開している。
シュリンクフィルムの需要が、食品・飲料用途がビールや飲料などの市場拡大に伴って増加。上記2品目に包装用アルミ蒸着フィルムを加えた3品目で、機能フィルム市場の90%を構成。今後は、LiBセパレーターやITOスパッタリングフィルムなどの電子材料関連の市場拡大も加わり、2015年の市場は130万トンが予測される。
LiBセパレーターは、携帯電話、ノートPC、タブレット、EV、電動バイクなどの用途を中心に市場を構成。現状では、携帯電話、ノートPC、タブレットなどの需要が7割を超えており市場拡大をけん引しているが、今後は国策として普及に取り組んでいるEV用途の需要増加が期待される。ただし、LiBセパレーターは技術難易度が高いため、当面は海外メーカーからの輸入が中心となる。
ITOスパッタリングフィルムは、静電容量方式のタッチパネルの市場に連動し、特にスマートフォンやタブレット需要の増加により市場拡大が期待される。日系企業が強い製品であり、中国でも高いシェアを占めている。タッチパネル用途では、OSG(カバーガラス一体型)技術やインセル技術の進歩により、需要が低下する可能性があるものの、2015年の市場は860万平方メートルが予測される。
機能フィルムにおける注目市場(中国国内需要)
2012年 | 2015年予測 | 2012年比 | |
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LiBセパレーター | 3億2,400万平方メートル | 5億1,000万平方メートル | 157.4% |
ITOスパッタリングフィルム | 500万平方メートル | 860万平方メートル | 172.0% |
ストレッチフィルム | 40万トン | 55万トン | 137.5% |